わたしにだって倫理観くらいはある。
兄を好きだ、もう愛している。それは恋愛感情で。
異質、な類いなのかもしれない。けれど間違ったものとも思わない。
友達と恋の話をしても、男子に告白をされても、そこに兄以外との想像が浮かばない。触られたりしたものなら心も身体も痒くて苦しくて、不快感だけが増していく。
兄とは平気なのに。その先だって容易に想像出来てしまう。
けれど、不快感の募るわたしに兄は心配の眼差しを向ける。いつもしてもらっているからと、わたしの頭を撫で、平気かと問うてくれて。
「これくらい平気。だから――」
病院で処方してもらった蕁麻疹の薬を飲み、わたしは兄にお願いをする。医者にかかるから症状を秘密にすることなど出来ない。原因は、まだ兄にも知られていない。教えるつもりはないし、兄を好きだから故の苦しみなら、わたしは喜んで享受する。
けれど、
だから――
「――たまに、こうして撫でていて?」
まだわたしの頭に乗せられている兄の大きな手に甘えながら、兄を頷かせた。
幼いころ、二人で乗り越えた時間、目覚めにくい兄に寄り添い語りかけた言葉たち、眠れなくなった兄の手を握り、額に手のひらを置く行為、わたしを心配して頭を撫でてくれる兄の気持ち。大切だと、お互いに言い合える関係――それらは、他にももっと、兄とわたしだけの秘密だ。
嬉しくて身体が震える。眠っている兄にキスのひとつでもしそうなくらいに感情が暴走する。
兄を好きになって手に入れた類いの自制心で己を律する。兄は、妹としてのわたしが大切で、失くしたくはないのだから。
兄の為には何が出来るだろう……
一先ず、心配をかけない為に、この蕁麻疹に耐性をつけるべき?
中学生の陳腐な脳で、わたしは陳腐な方法を模索しながら、兄の手のひらの心地よさに目を閉じた。



