甘やかな螺旋のゆりかご





中学に入学する前あたりから、周りの女子は色めき出した。誰が好きだとか付き合っているとか。


友達と話す恋の話の色は、わたしにとっては兄への感情と同じだと思い至る。誰にも話すことはなく、胸の中で大切に扱った。


未だ、時折やってくる眠れない夜が兄には変わらずあった。一足先に高校に行ってしまった兄は、自発的な夜更かしや徹夜もあったけれど、やはりそれとは様子が違う。わたしにだけわかる小さな、もう勘でしかないのかもしれないけれど。


わたしだけだという甘美なもののひとつに胸を震わせながら、真夜中、もう別々の部屋になってしまった兄の自室の扉をノックする。


今日の兄は、おそらく――


小さく応答があって兄の部屋に滑り込むと、案の定呼吸の浅い兄がいた。分解された二段ベッドの片割れに、窮屈そうに膝を曲げて。


「お兄ちゃん」


わたしは、想像した聖母の笑みを浮かべて兄のベッドのすぐ近くに腰を下ろし、そして直ぐ様兄の手を握る。想いを自覚してからは、兄の額にもう片方の手のひらを置くようにもなった。兄はそれを、気持ちよさそうに受け入れてくれる。


次第に呼吸が整ってくる兄の傍、もう先に寝てしまうことはなくなったわたしは、兄が眠りにつくまでささやかな会話に興じる。


「大切な妹の敵に、是非ともわたしは何かしてやりたいわ」


「僕もだよ。……けど、泣かれて反対されちゃあね」


「――なら、もっと幸せにしてあげなくちゃね」


うつらうつらとしてきた兄の瞼をなぞって閉じさせる。


今日あった出来事。大切な妹が、わたしたちとは血の繋がりがないから家族じゃないと泣き出したのだ。同級生からの告げ口、同級生は、その両親からの入れ知恵だった。妹は、まだそれを知らなかった。多くは理解出来ず、けれど家族じゃないという言葉にショックを受けてしまった。成敗を画策するわたしたちに、妹は更に泣いて止めにかかられてしまった。


わたしたちは幸せなのだと安心するように、兄は眠りについた。