工場長との面談が終わり、スグルは簡素な部屋に戻る。

がらんとした何もない部屋。
あるのは体を休める為のベッドだけだ。

スグルはベッドに横になり、天井をぼんやり見つめる。


『・・・・・・やっぱり私のこと忘れちゃってるんだね』


夕暮れ時に出会った女の言葉が脳裏を過ぎった。

彼女はスグルのことを知っているようだった。
だとすれば、自分も彼女のことを知っていなければならないはずだ。スグルは思う。

確かに、彼女のことを知っているような気はするのだ。

彼女と、どこかで会ったような気はする。

けれど、それがいつどこでのことだったのか、スグルにはどうしても思い出せなかった。