「ここで私と会ったことは誰にも言ったらダメだよ」


少年はその言葉にしばらくなんの反応も見せなかったが、やがて、さっきと同じように頷いた。

それから、トウカの体を避けるようにして緩やかな坂を下りて行く。


「・・・・・・お願い、私のこと思い出して」


トウカは、風にかき消されるほど小さな声で呟いた。

変わりきった少年の姿が辛かった。

トウカは少年の後ろ姿が夕闇にまぎれて見えなくなるまで、その場に立ち尽くしていた。