「隣、座るね」


トウカが小さく言うと、少年は首を縦に振って応えてくれた。


「ここからなにを見てたの?」


少年はなにも答えない。
トウカも答えを期待していたワケじゃなかった。

そのまま同じように街を見下ろす。
少年が見ている街並みは自分が見ている色のある街並みとは違うんだろう。

トウカは少年を横目で盗み見る。
輝きを失った少年は、トウカの記憶に残る彼とはまったく別人のようにうつった。

強い風が吹く。
以前より少し伸びた少年の髪が揺れる。

なにも語る言葉が見つからなかった。
二人は、そのままそこにたたずんでいた。