くすんだ街

そして、待ちに待った終業時間がやってきた。

トウカは、工場の前の通りで少年がやってくるのを待った。

不自然に思われないように極力注意しながら――
ゆっくり、工場の入り口に視線を動かす。

少年がいた。

トウカに向かって歩いてきている。
ドキドキと胸が高鳴っていく。

しかし、次の瞬間、トウカは信じられない思いで少年を見つめた。

少年から溢れていた輝きが消えていた。
この街にいる多くの者たちと同じ無表情。

トウカのことを気にすることなく少年は通り過ぎていく。

涙がこぼれそうになった。