少年にいきなり腕を掴まれた時、トウカは自分の身になにが起きたのか理解できなかった。

ただ引きずられるまま路地へと連れて行かれた。
少年が立ち止まり、自分のほうを振り返る。

トウカは呆然としたまま少年を見つめた。
少年もトウカを見つめ返す。
その熱っぽい眼差し。

トウカの心のどこかで奇妙ななにかがぼんやりと形を成し始める。

これ以上、少年を見るのは危険だと、トウカが目を逸らそうとした瞬間、


「好きです」


少年が端的な言葉を発した。

トウカには少年の言葉の意味が理解できなかった。

ただ、先ほど感じたなにかがムクムクと大きくなるのを感じた。