断罪校則

だから、知らない。


「しゃぼん玉とんだ。屋根までとんだ。屋根までとんで、壊れて、」

何も無い、殺風景な屋上で。

「……消えた」

瞳の奥に憎しみと絶望を宿らせ、一歩踏み出せば下へと落ちてしまう。そんな生死が分かたれるギリギリの危うい淵に、際に、彼女が立っていた事を。

「もう少しなんだ。後、もう少しで解りそうなんだよ」

この言葉の意味も。決意も。

「敵は絶対に取ってみせる」

俺は、俺達は知らなかった。

「――先生」

苦しそうに。ただ、一言だけ。まるで魂を絞り出すように。彼女が呟いていた事も。
















――校長室


「さて、今年の新入生はどうですか?」

校長室に集められたのは、新一年生の担任と副担任。

「うちのクラスは優秀ですよ」
「いえ、うちのクラスだって良い子ばかりです」
「うちだって負けてませんよ」
「いや~、うちだって」

こんな風に、次々と教師らが自分のクラスの子供達の自慢をし始めた、そんな中。浮かない顔の女性が一人。

「おや?高野先生の所は何か問題でも?」

校長の質問に、名指しされた女性は俯く。その顔は可哀想なぐらいに真っ青だ。でも、それでも懸命に言葉を紡ぎ出す。出さなければいけないと思ったのだ。

「…す、少しだけ問題のありそうな生徒が…ふ、二人ほど居ます」
「ほう、そうですか。その者らの名前は?」

「苑田亜貴と、笹原和也…」

クク、と。二人の名前を耳にした瞬間。校長の口角は、歪に。不気味に持ち上がった。