断罪校則

十分後、校長室前 ――side.ユズリ


(……おかしい)

確かに、数分前まで人の気配を感じていた。それが今はどうだ。物音一つ聞えてきやしない。不審に思いながらもドアノブに手を掛け、分厚い扉に耳を寄せる。

(これは罠かだろうか)

一旦、苑田君と合流するべきか否か。

考え得る最善の策を頭のなかで巡らせてみるも、答えは出てこない。何より、体の方が先に動いてしまっていた。

カチャリと小さく音を立てる金属音。

(鍵が、開いている?)

益々怪しく感じたけれど、開けてしまった以上はもう引き返せない。僅かに漏れる呼吸音にさえ気を遣う。そんな重苦しい空間の中へ視線だけを投げ入れた。

(……誰も居ない)

其処は、初めて見る校長室。

何の変哲もない部屋の造りに、少しだけ拍子抜けをした。もっと特別なものがあると思っていたのに。何故これが、


【七】校長室に近づく事を禁ずる。

に、繋がるのだろうか。やはり、問題なのは校長であって部屋は関係ないのか。

「―――」

そんな事を考えながらも足をゆっくりと進める。注意深く、少しでも、“なにか”があるのなら見逃さないように。捉えられるように。

(これは…?)

不自然に半開きになっている棚が、カーテンの隙間から差す弱い光に照らされてまるで、見つけて下さいと訴えるように。ぼんやりと浮かび上がっていた。

(罠か、偶然か…)

触れた途端に警報が鳴るかもしれない。そう思うと手が出せず、胸の辺りをうろうろと彷徨う指先。