断罪校則

「別に悪口を言ってるつもりは無いよ。ただ、見ちゃったんだよネ」
「は?何をだよ」

和也はもう一度深い溜息を吐いて。俺とは視線を合わせる事なく、ゆっくりと言葉を続けた。

「矢木さんの薬指の指輪。知ってる?」

薬指の指輪

そう言われてみれば、シンプルなデザインの指輪をはめていた気がする。気がするけど、それに何の問題があるのかと疑問に思った。だってそうだろ。この学校は茶髪にピアスがオッケー。なら、当然、指輪だって許されている。だからこそ、疑問に思った。

「それがどうかしたってのか?」
「ん、この前サ?矢木さん、上級生の人達…って言っても矢木さんにとっては同級生かな。その人達と口論してたんだよ。別に気にする事じゃ無いと思ったんだけど。内容が引っ掛ってネ」
「…口論」
「どうも、指輪の事を冷やかされて口論になってたみたいなんだけど。矢木さん、最後になんて言ったと思う?」

いつになく真剣な親友の声色に。俺は、無意識に喉仏を上下した。




しかし、

残念ながら始業のベルが教室全体を包み込む。なんつう間の悪さ。

「あー、じゃあ続きはまた後でネ?」
「お、おう!じゃあ、次の休み時間にな」

本当はすぐにも続きを聞きたくて仕方が無かったけれど。チャイムが鳴ってしまった以上、そういうわけにもいかない。俺は、重い足取りで自分の席へと戻った。

矢木さん
矢木ユズリ

和也は一体何を見て、何を聞いたのだろう。そして、矢木さんは俺に、いや俺達に。何を伝えたかったのだろうか。

ゆるりと矢木さんの席に視線を投げた。でも、そこに彼女の姿は無かったんだ。