断罪校則

「―――」

暫く頭が働かなくて。その場で呆然と立ち尽くしていると、不意に後ろから声を掛けられた。振り返らなくても、相手の想像はつく。

「おーい、亜貴?何してんのサ」
「…あ、やー、別に何でもねえよ」
「何でもなくて矢木さんに声をかけるのかな?」

和也に嘘は吐けない。というか見破られてしまうと思う。でも、それでも。

『君達ハ目ヲ付ケラレテイル』

こんな事を、俺の口から言える筈が無かった。

「マジだって。ちょーっと話してみたくてさ?でも振られちまった」
「ふーん。ま、そう言う事にしといてあげるよ。でも、サ?」

和也の瞳の色が、沈む。

「矢木さんには、関わらない方が良いんじゃない?」

俺には、目の前の親友の言っている意味がよく分からなかった。

矢木ユズリ

このクラスで唯一の留年生。勉強もスポーツも出来るのに、出席日数が足りずに留年をしてしまったのだと誰かが噂していた。

モデル並みの長身に、ハーフを思わせる顔立ちと、独特な喋り口調。そして、真っ直ぐに伸ばされた腰より少し高めの位置で揺れる、金色の髪。

確かに近寄り難い印象はある。でも、関わらない方が良いなんていうのは、少し大袈裟な気がした。なにより、和也の口からこんな言葉が出てくる事に違和感を感じた。

「珍しいな、和也」
「ん?何がサ?」
「お前、滅多に人の悪口とか言わねえじゃん」

肩を竦めて小声で問うと、和也は少しだけ間を置いてから溜息を吐く。