◆◆◆
季節は移り変わり、街全体が白く色付く冬。
「しゃぼん玉とんだ」
私は屋上で独り、しゃぼん玉を飛ばしていた。あの時の指輪をはめて。
「屋根までとんだ、屋根まで、とんで…」
先生が居なくなって、世界は再び灰色に戻ってしまったよ。たった数ヶ月だったけど先生との日々は虹色に輝いていたから。
だから、
先生の居ない世界なんてつまらない。
あの日以来、学校に行く事は殆どなくなった。このままだと恐らく留年するだろう。でも、それでも良いと思っている。
「先生」
天を仰ぎながらゆらゆらとしゃぼん玉を飛ばす。虹色に光るしゃぼん玉を。
自惚れだと言われるだろうか。
『なあ、ユズリ。……なんで俺達はもっと早くに出逢えなかったんだろうね』
でも、私は信じたい。
『頼むよ。此処から天まで届くように、ユズリが飛ばしてくんない?』
先生、
しゃぼん玉。飛ばし続けるから。だから、もう少しだけ、あと少しだけ、
――泣かせて下さい。
春になったら泣き止むから。
春になったら前を向くから。
春に出逢った、最愛の人。
「…春人」
やっと、やっと、貴方の名を呼べた。
季節は移り変わり、街全体が白く色付く冬。
「しゃぼん玉とんだ」
私は屋上で独り、しゃぼん玉を飛ばしていた。あの時の指輪をはめて。
「屋根までとんだ、屋根まで、とんで…」
先生が居なくなって、世界は再び灰色に戻ってしまったよ。たった数ヶ月だったけど先生との日々は虹色に輝いていたから。
だから、
先生の居ない世界なんてつまらない。
あの日以来、学校に行く事は殆どなくなった。このままだと恐らく留年するだろう。でも、それでも良いと思っている。
「先生」
天を仰ぎながらゆらゆらとしゃぼん玉を飛ばす。虹色に光るしゃぼん玉を。
自惚れだと言われるだろうか。
『なあ、ユズリ。……なんで俺達はもっと早くに出逢えなかったんだろうね』
でも、私は信じたい。
『頼むよ。此処から天まで届くように、ユズリが飛ばしてくんない?』
先生、
しゃぼん玉。飛ばし続けるから。だから、もう少しだけ、あと少しだけ、
――泣かせて下さい。
春になったら泣き止むから。
春になったら前を向くから。
春に出逢った、最愛の人。
「…春人」
やっと、やっと、貴方の名を呼べた。