ざあざあと、
篠突く雨の向こう側に見えた人影。
両の腕をだらんと下げ、膝をついて茫然としている後ろ姿は、まるで糸を切られたマリオネットそのもの。靴は玄関に綺麗に揃えられたまま、裸足で。体にピッタリと張り付く服は、肌の色が透ける程に濡れていた。
「……なあ、かず、」
俺の声に、びくりと大袈裟に跳ねる肩。
「―――亜貴」
ざあざあ、ざあざあ、
雨音に掻き消されそうな程に、か細く、小さく、震える声の主はやっぱり和也で。ゆっくりと振り返るその頬には、雨とは異なる物質の、違う速度で流れ落ちる大粒の涙。
「―――亜貴、…あ、き」
「!」
ぐしゃりと顔を歪ませ、泣き崩れていく和也の向こう側に――“ナニか”を捉える。
「……そん、な…嘘、だ」
ざあざあ、ざあざあ、
雨と共に流されていく冷たい血液
真っ白だったワンピースは紅色に染まり
骨と、肉と、筋と、切断痕
胸の辺りでクロスされた手には
花弁が切り刻まれたホワイトリリー
頭部は、無かった。
「これ、サ。あかりジャないよネ?違うよ、ね」
「…っ、和…」
「はは、首がネ、ないン…」
「……う…あ、ああ…あ゙ぁああァア゙ァ!」
和也は。
変わり果てた妹の亡骸を抱き締めながら、天に怒りをぶつけるように。声が枯れるまで叫び続けた。何度も、何度も、あかりちゃんの名前を繰り返しながら。
天に向かって。何度も、何度も。
俺はその場から一歩も動く事が出来ず、ただ目の前に広がる悲惨な光景を瞼に焼き付ける事しか出来なかった。



