断罪校則

同日、午後六時過ぎ


「……あかり、遅いな」

より一層激しく降り出した雨を窓越しに見つめながら、和也は小さく呟いた。そんな和也の隣に立ち、俺はそっと肩を叩く。

「もうすぐ帰って来るって。心配すんな」
「ん、」

そろそろ自分も帰らないと母さんにどやされるな、とは思いながらも。あかりちゃんが帰ってくるまでは一緒に待っていようと心に決めて、先手必勝。

怒られる前に電話でも入れとくかとスマホを手に取ろうとした、――その時。


タイミング良くチャイムが鳴った。

「あかりかな?でも、なんでチャイムなんか。……取り合えず見て来るよ」

慌てて玄関に向かう和也の背中を見送って、俺は小さく微笑む。ああ、良かった。あかりちゃん帰って来たんだなって。

相変わらずのシスコンっぷりだけど、それでこそ和也だよなって。笹原家だよなって。




けれど。

和也は走って行ったっきり、何分待っても。何十分待っても。戻っては来なかった。

もし、あかりちゃんじゃなくてセールスや近所の人だったとしても流石におかしい。こんなに遅くなる筈はない。

嫌な、胸騒ぎがした。

「……和也?」

開放されたままの扉からそっと廊下に出る。電気の点いていない其処は薄暗く、雨の日続きの湿気も伴って忌避感が広がる。なんだ、この感覚。

なにより、やけに外の音がハッキリと耳に届いた事に疑問をもった。

ざあざあ、ざあざあと、

雨の音が聞こえる。




「かず、や?」

再び、胸の辺りが騒ぎだす。

居ても立ってもいられなくて、考えなきゃいけない事を全部棄てて俺は玄関を目指した。本能のままに。早く、早く和也の処へ…