――三年前、


ジトジトと鬱陶しい雨が降り続ける季節。俺達は中学生になったばかりで、和也の三つ下の妹、あかりちゃんは小学生だった。

和也の親は早くに離婚している。

それは和也もまだ幼く、あかりちゃんに至っては一歳の誕生日を迎えるか迎えないかの頃。だから俺も親父さんの事は幾ら幼なじみとはいえぼんやりとしか覚えていないし、和也ですら殆ど記憶にないと何時だったか笑って言っていた。

そんな、父親の居ない家。

つまり、あかりちゃんにとって和也は兄であると同時に父親という存在でもあって。

いつも可愛らしい笑顔で和也にくっついて歩いているあかりちゃんを、俺は一番近くで見ていた。その関係は二人が大きくなってからも変わる事はなく続いていて。

俺と遊ぶ時にも、あかりちゃんは必ずついてきていた。和也の服の端を掴んで、ひょこひょことひよこみたいに。微笑ましくって、愛おしい。一人っ子だった俺には、その光景が羨ましく映っていたんだ。


『かずくん!あっくん!』

幸せだった。

和也もあかりちゃんも、俺も。




――あの日までは。


そう、全てはあの日が始まり。

絶対に誰も予想していなかった。出来る筈もなかった。和也もあかりちゃんも、俺も。

解っていたのは犯人だけ。

ジトジトと鬱陶しい雨が降り続ける季節。あかりちゃんの笑顔は赤く染まり、和也はいつまでも降り続ける雨のように涙を流した。


決して、忘れてはいけないあの雨の日。