「…つうか!何だよそれ!」
人は、時として非情にならなければならない。この学校の教師達のように。子供へと向けて。牙を剥かなければならない。
「鈴木」
再度、名前が呼ばれる。
まるでそれは、死刑宣告。重く、どす黒い、常闇の世界へと誘うように。
「君は、瀬乃以外にも交際をしている女性が居るな?そして、その女性たちとも性交渉をしている。間違いないな?」
「――っ!」
「本当に、残念だよ」
男の視線は、先程から真っ直ぐに教師の右手に注がれていた。逸らす事なく、其処だけを。――注射器を。
「大人しくしていれば痛くは無い」
「や、止めろ…」
「大丈夫」
――ガタッ!
あまりの恐怖に、後ずさりをしてパイプ椅子にぶつかる。派手な音を立てる椅子には目もくれないで、自分をただ冷徹に追い詰めて来る教師。もう、後がない。
「い、嫌だ!止めろ…止めろよ…!」
必死の問い掛けに。
応えてくれる慈悲など、なし。
「あ゙ああああぁァア゙ぁ!」
校則違反者、鈴木裕翔
サッカー部部室内にて、消息不明。