ビクリと、二人の肩が跳ねた。

「……は?っ、な…!先生?!」
「えッ!うそお!」

突然、解放された扉の向こう側には。三人の教師が立っていた。その瞳の奥に、光は一切宿っていない。

「鈴木、幾ら合意の上とは言え。避妊具はちゃんとつけような?」

一人の教師が、冷たく言葉を吐き出しながら二人に近付いて行く。

「もし子供が出来たらどうするつもりだ?学校を辞めて働いて。瀬乃と子供を養っていく覚悟があるのか?今ある生活も、培った人望も、サッカーでの活躍も、なにもかも棄てて」
「え、ちょ…先生、なに言って…」
「それとも、堕胎させるつもりか?お前は、お前らは、一時的な快楽を得る為に。人を一人殺すというのか?簡単に、なんの罪の意識もなく」

そう広くはない部室内で、簡単に距離を詰められてしまえば。二人はもう何も言う事が出来なかった。

すっかり萎えてしまった性器をしまうでもなく、乱れた制服を直そうともせず。二人は情けない顔で、教師を見上げる事しか出来なかった。

「…さて、瀬乃アユミ。君はこれで四つ目の違反だ。そして鈴木裕翔、…非常に残念だよ。君は“こっち方面”意外では、優秀な生徒だったのだがな?」




「――え?」













気が付いた時には、二人は既に離れ離れにされていた。

いつの間に?どうして?そんな疑問を持つ事さえも、許してはくれないと言うように。迅速かつ機械的な教師たちの動きに、いよいよ二人の表情は固まった。

そして、

「瀬乃を連れて行け」

決定的な言葉が告げられ、遂に“何か”が終わると空気で感じる。いや、もしかしたら始まるのかもしれない。しれない、けれど。

「やだってばあ!離してよ!ユト君!…ユト君助けてえ!」

この時の男には。

「ユトくん!」

ヒステリックな叫び声を上げながら、力叶わぬ大人に連れて行かれる彼女を。その、瞳に映し込むことだけで精一杯だった。

「―――!―――!」

聞き親しんだ声が遠ざかって行く。

扉は固く閉ざされ、窓の外から差す光が埃っぽい部屋に線を描いた。完全に引き離されてしまった二人。残されたのは男同士、一対一。

「鈴木」
「……んだよ」

漸く下着とユニフォームをずり上げ、声に怒気を含ませてみても。迫力も何もあったもんじゃない。寧ろ、酷く滑稽だ。

「これで、五つ目の違反な訳だが」
「そ、それが何だってんだよ!変な罰則でもあんのか?!ハッ、上等じゃねえか!」