「日向くん、くるみちゃんと仲良いんだね」

「え?」

 廊下の方に気を取られてて机のそばにいた彼女に気づかなくて、間の抜けた返事をした。

「あ、ごめんね、いきなり話しかけて」

 もじもじしながら、僕をまっすぐに見つめる気の強そうな瞳。

 クラスメイトの西城さんは、お嬢様育ちで才色兼備、誰もが羨む女の子の理想像といったところ。

 どうやら僕に気があるらしいのは半年前から明らかだった。

 どうして告白してこないのか、甚だ不思議でならない。

「いや、いいんだ、それで何?」

「日向くんて、よくくるみちゃんと話してるから、仲良いのかなって思って」

 またその話か。

 よく言われるだけにため息をつきたくなるが、なんとか抑えた。

「まあ、幼なじみだからね」

「そうなんだ…幼なじみ…彼女じゃないんだね」

「うん、違うよ」

「そっか、よかった」

 安心したように僕の側から離れて、女の子特有の噂話と他人の色恋沙汰が大好きな集団に入っていった。