「ゆーま!」

 僕の名前を呼ぶ君。

 教室の隅の席の僕に、ためらいもなく恥ずかしげもなく走り寄ってくる。

「悠真、あのなぁ、今日、すごい良いことがあってぇ、聞きたい?」

 小さな顔からこぼれ落ちそうなほどの満面の笑み。

「うん、聞きたい」

「今日な、朝、おとんが真っ白の子猫拾ったんやって!それでな、飼うことになってぇ、どんな名前がええと思う?」

 そういうことか。

 そういえば猫が大好きなんだっけ。

「さあ、にゃん太とか?」

「アホー、もっとかわいい名前つけんと」

「オスなの?メスなの?」

「まだ聞いとらん」

 平然と答えて、また目を輝かせた。

「だから、オスにでもメスにでもつけられる名前を、頭の良い悠真に考えてもらおうと思って、はるばる3組まで来たんよ!さあ!」

「さあって言われても、そんなすぐ浮かばないよ」

「悠真頭ええのに使えんなぁ…んじゃ、帰りまでに考えとき」

「はいはい」

 またパタパタと走り去って行く君。

 廊下で友だちと合流して、何かを喋っているけど、きっと冷やかされてるんだろう。

 君は、僕のことをなんて言ってるの?

 ただの、幼なじみ?