名もなき傍観者


鉢屋は倒れる下っ端たちを一喝して叩き起こすと、


「まさか、狭間んとこの息子にこんなとこで会えるとはなぁ。顔しっかり覚えておくわ。」


置き土産に意味深な言葉を残して、そのまま去っていった。


完全にいなくなったのを確認して、徹也はひまりのところへ。

「てっちゃん。」


「大丈夫か!?ひまり?」


「私は大丈夫!それよりてっちゃん、怪我してるッ!」


徹也のことを心配する向日葵。
あんだけ怖い目にあったのに、もう彼氏の心配ですか。


「お父さんも、血が出てる。急いで病院に行かなきゃ。」


電話を掛けようとする向日葵。


「いや、ここに救急車を呼ぶと色々とややこしくなる。父さんは大丈夫だから、このお金でタクシー使って徹也くんを病院に連れて行ってあげなさい」


「でもお父さん。ひどい怪我じゃない!病院に行かないとダメだよ」


「病院には戻りたくないんだ。」


慶三の言わんとすることが向日葵には理解できたようだ。
俺にも理解ができた。


「わかったよ。でもせめて手当てくらいはさせて」


「すまんが頼む」