《3》


夢を見ていました。
とても幸せな夢でした。
幸せだった夢でした。
おしまい。




一一一一一一一一一一一一一一一一一一


次の日。
場面は学校へと切り替わっていた。



あ、先に言っておきますが、傍観者も寝ますよ?
普通に寝ますよ?
ご飯は食べなくても平気ですが、寝ます。寝ないとダメです。死にます。死に至ります。嘘です。至りません。いたって平気です。
とはいえ寝ないで、向日葵の寝顔をひたすら観察するとか、もはや傍観者というか変質者だからね。
名もなき変質者なんて嫌だッ!!!



「ウッス!おはようー!」
「おはようー!」



教室を空けて徹也と向日葵が挨拶をする。



「今日もラブラブカップルの登校だ」
「朝から熱いねぇ、見せびらかしやがって、ったくよぉ」
「ほんとバカップルだなぁお前ら」



男達がわいのわいのと野次を飛ばす。




「当たり前だろ!俺たち超ラブラブだぜ!なっ?ひまり!」


「ちょ、やめてよてっちゃん、、、んもう、恥ずかしいなぁ」




徹也はこの手の冗談には慣れてる風だが、向日葵は耐性がないようだ。




「おはよう!ひまり♪」




向日葵に声をかけてきたのは、同じクラスのえっっと、、、
えっっと、、、あーー、、、、




「おはよう!ちあき♪」




そう、ちあきだ!
知ってたからね?最初から知ってたからね?
何でもは知らないけど、知ってることは知ってるんだぜ!
僕がコイツの名前はちあきって知ってることくらい全然知ってる!
これは知ってた!完全に知ってた!




「ひまりなんか目疲れてるよ、少し腫れてるし、昨日なんかあった?」



「ひぇ!?え、なんもないよ!ちょっと寝不足なだけ!」




(ちあきは勘が鋭いなぁ。。。)



また心の声が、、、
これが僕の新しい能力(スキル)
マインドオブリーディング(読心術)というやつか。

おいッッ!そこのお前!中二臭いとか言うな!誰が中二病やねん!
次言ったら傍観してやるからな!
傍観プレイの刑なんだからな!

それにしても、
ちあきはひまりの事を、ひまりんとは呼ばないんだな。
周りの女子はみんなひまりんって呼んでるのに。
まあひまりからしてみればそっちの方が好都合なんだろうし、ひまりの好みをさりげなく押さえてるあたり、これこそが真の友情と言えよう。



「寝不足ね。なんか悩みごととかあったらウチに相談しなよ!ひまりの為ならいつでも時間作るからさ」




「ありがとね。ちあき」






ありがとね、ちあき。






ん?






ってなんで僕までちあきに感謝してるんだよッッ!
なんだこれ、ちょいちょいひまりの感情とリンクすると言うか。
自分がひまり自身になってるような感覚になる。
わけわかんね。わけワカメちゃん。
僕は傍観者だ。ただの語り手だ。



ま、まさかッッ
これが第二の能力(スキル)
その名も
マインドオブユニオン(精神同化)なのか!?




……もうやめよう中二ごっこ。




なんにせよ
僕は物語の登場人物にはなれない。


これは必然だ。




一一一一一一一一一一一一一一一一一一


五時間目、終了。



「よっしゃ授業終わったぁ、一緒に帰ろうぜ!ひまり」



「ごめん、てっちゃん今日は用事があって」



「用事?なんだよ用事って?俺も一緒だとまずい用事なのか?」



「ごめん、今日はちょっと、ごめんなてっちゃん」



「まさか、、、他の男と会うとかじゃねぇだろーなぁ」



「それだけは違う!浮気は絶対ありえない!」



「神に誓う?」



「誓う誓う!!!」



「じゃあ誓いの口づけを」



「学校ではイチャイチャ禁止!」



「じゃあ学校じゃなきゃ何してもいいってことだな」



「…………………(*/□\*)照」



「ウブだなぁひまりはw」



「う、うるさいバカてっちゃん////」



「よし、分かったよ!俺はひまりを信じる!」



「、、、ありがとうね。てっちゃん大好き!」



(てっちゃん大好き!)



てっちゃん大好、、、ってだからシンクロすな!!!
気持っちわるいわッッ!!!
なんなのこのシンクロ機能!!
スイッチがあるならOFFにしたいわ!
危うくBLルートに突入するところだった!ほんと勘弁してくれ。
つーか心の声一緒ならいちいち聞こえなくていいよッッ!!!



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〜向日葵side〜




ひまりは学校の校門で徹也と別れて一人目的地へと向かった。





電車で約1時間かけて向かった先は





片田舎の一帯にある墓地だった。





水野家と書いてあるお墓の前にひまりは立っている。




水野とはひまりの名字だ。




「母さん久しぶりだね」




来る途中で買った花を一本一本挿してゆく。
お墓に水をかけて
線香も変えて、
キレイになったお墓の前で手を合わせてしばらく瞑想する。





この時、ひまりが何を考えていたのかは分からなかった。








帰り道。
ひまりは一人の男性とすれ違った。





40代くらいの男性だ。
テキトーに生やしているような無精ヒゲと、だるだるにのびた服、生気を失ったような顔を見て、第一印象としてはけして良いとは言えない。




男性はひまりに声をかけてきた。





「一人でお墓参りかい?」




「あ、、はい、今日は母さんの命日だから」




「そうか、偉いなぁ。俺も今日は妻の命日でね。」




「………そうなんですか。」




「あ、ごめんごめん、もう暗いのにいきなり話しかけてびっくりしたろ。気をつけて帰るんだよ。」





何かを悟ったのか、男性は別れを告げて歩き出した。





僕はこの人を知ってる。






もちろん向日葵もこの人のことを知ってる。





男性が立ち去ったあと、ひまりはしばらくその場で立ちすくした。
拳を強く握りしめながら。







(まただ…。)









(また繰り返すんだね…。)











「もう私のこと思い出してくれないのかな………お父さん。」