〜挿話〜

僕は何者なんだろう。
僕には名前がない。
言葉も話せる。
感情もある。
だけどこんなにも空っぽなのは何故だろう。
僕は何の為にここにいるんだろう。





……………傍観者。





そうだ僕は傍観者だ。




ただの、
単なる、
それだけの、
存在のない、
語り手。
傍観者。



傍観者ってなんなんだろう。






この物語を語り続けたらその謎も解けるのかな。



一一一一一一一一一一一一一一一一一一

《2》


〜向日葵side〜




向日葵が泣いている。
帰り道に一人泣いている。





(てっちゃんのことはすごく好き。。)





ん、これは向日葵の心の声?






(てっちゃんはカッコイイし、優しいし、面白いし、私のことをいつも考えてくれる。自慢の彼氏だって心の底から言える。でも、なんで私はこんなに寂しい気持ちになるの。満たされない感覚は何。なんで私泣いてるんだろう、、、でもこの理由はわかる。私はてっちゃんに嫉妬してるんだ。)




向日葵の感情が流れてくる。
えぐるように。
突き刺すように。
まとわりつくように。
僕の心を埋め尽くす。
侵略してくる。




「ただいま、、、」






……………………。




向日葵の声は暗い部屋に虚しく消えた。一人の部屋。
誰もいない部屋。
電気をつけるとまるで生活感のない広いリビングが目の前に現れた。



そっか、、、。



向日葵はここで一人で住んでいるんだ。




どうしようもなく嫉妬している。
暖かい家族というものに。




家庭というものに。





いつしか僕も涙を流していた。





そうか、僕も涙を流せるんだ。





でも僕は傍観者だ。
僕はなにもできない。
干渉できない。
ならこの涙はなんだ。
謎。不思議。不可解。
僕は向日葵のことも徹也のこともある程度知っている。
なのに僕は僕自身ついて知らなすぎる。知らないことが多すぎる。






もし僕の声が届くのなら、、、






向日葵に
おかえりって言ってあげたいな。







ごめんね。向日葵。










ごめんね。僕の大切な人。





一一一一一一一一一一一一一一一一一一



〜夢の中〜



「ひまり夕食ができたわよ」



「はーい」



「ひまり、ちゃんと手は洗ったのか?」



「ちゃんと洗ったよ、もうッ父さんはいちいち細かいなぁ」




「ほらほら、席ついて、冷めないうちに頂きましょ」



「いただきまーす!」



「それ豆腐で作ったハンバーグなのよ、味はどうかしら?」



「え、これ豆腐なのか?普通のハンバーグだと思ってた、豆腐もバカにできないなぁ」



「すごくおいしいよお母さん」



「あら良かった♪それに豆腐はカロリー低いからね、ダイエットにも効果的よ?アナタ」



「なに!?それは俺のこのメタボリックさんに言ってるのか?」



「父さん!お腹ぶよぶよぉ〜。ダイエットしなよ!」



「ひまり、お前もそのうちこうなるぞ!はははは」



「うふふ、ひまりは私と似てスタイルがいいから大丈夫ですもんね」



「そうだよー!父さんみたいにはならないもんねー!ふふふっ♪」







……………………。












……………………。











…………お父さん。







…………お母さん。







お願い………いかないで。