名もなき傍観者

向日葵side


徹也と別れ帰宅した向日葵。
宿泊はしないらしい、家にいる父親を長く放置はできないからだろう。


「ただいま」


玄関で靴を脱ぐ向日葵を男が出迎える。だらしない格好で、よれよれと歩きながら。その姿はいつにも増してひどい有り様だった。


「え、お父さんどうしたの!?」


「ひまり…ちゃん。ちょっとね、色々あってね」



よく見ると何度も殴られたように顔は腫れ上がり、服もボロボロだ。口の中が切れてるのか血も出ている。


「色々って、どうゆうこと!?血でてるじゃん!」


向日葵は急いで手当てを始める。


「俺、過去になんかやらかしちゃったのかな。いきなり怖い人達がウチにやってきて、金返せって。イテテ」


「怖い人達……」


向日葵には思い当たる節があるようだった。



「きっと明日も来る、殺される……怖い……」



「大丈夫だよ父さん!明日来たら私がちょっと話してみるから!」



「それはダメだ、君に何かあったら大変だ」


「話せばきっと分かってくれるよ、お金が必要なら私バイトしてるから、用意もする」


バイトで稼げるくらいの金で、まとめて返せるような額なら奴らは最初から来ないと思うが、このままだとひまりが危ない。どうすればいい、ボクは何もできない。
ボクは見てることしかできないから。


「明日は逃げよう、どっか遠くに。」