運動部と違って、新人戦があるわけでもない美術部は、春休みの部活は無かったので、ピアノの練習に夢中になりすぎて、その存在をすっかり忘れてた。どうしよう。

「やめるん?」

「う〜ん…」

答えあぐねていると、

「若い時の苦労は買ってでもしろって、言うやんか」

って、笑くんが真顔で話かけてきた。

「好きやったら、頑張って、両方やったら、ええんちゃうん?」

「…」

しょ、笑くんが、まともなこと言ってる…。

「ん?どないしたん?」

「あ、ううん。そうだね。出来る限り両方頑張ってみる」

「それがええ」

妙に神妙な顔で笑くんは、大きく頷いた。