「じゃ、弾かせてもらってもいいですか?」

「どうぞ」

パイプ椅子から立ち上がって、ステージ上のキーボードの椅子に座り直す。

「えっと、何弾いたらいいですか?」

「あ、じゃ、これなんてどう?」

アベちゃんさんが、楽譜をキーボードの上に置いてくれた。

「さっき弾いた中のバラードの曲。これ、結構キーボードがメインで聴かせ所があるから」

うっ、試されてる。ふぅ〜。落ち着け〜、僕。大きく深呼吸してから、鍵盤に指を乗せた。いざっ。

「…」

「…」

「…」

「…」

「…」

………。ふぅ。終わった。あ〜、初見で弾くなんて緊張したぁ〜。一回聴いてたから、なんとかなったけど、大丈夫だったかなぁ?