やっぱりカズヤには、あたしの全部を見透かされてる。
だけど受けとめてくれるのは何故なんだろう。
あたしはネイルが禿げかけている、クリアピンクの爪を眺めながら考えていた。
するとカズヤが、あたしの肩を抱き寄せて言った。
「お前は、スバルって奴の記憶を全部なくしたのか?」
あたしは否定する。
今もまだ覚えてる。
楽しかったことも、嬉しかったことも、辛かったことも…。
あたしはこの日初めて涙を流した。
隣にいるのはスバルではないのに。
カズヤは涙が流れるあたしの頬にキスをして言った。
「俺はお前を傷付けないよ」

