月下美人が堕ちた朝

「ごめんね、だけど今のままで良いはずがないから。
今度三人でランチに行こう。
お母さんが、行きたいって言ってたよ」

あたしはこのメールを何度か読み返して削除した。

三人でランチだなんて笑える。

そんなことで二十年間という時間が埋まるなら、あたしだってとっくに母親を許せてる。

そんな簡単なものじゃない。

ヒトの心は。

残りの十一件は、全てフミカだった。

「スバルと一緒にいるよね?」

「今どこ?」

「電話出て」

「早く連絡して」

その全てが緊急を要するものだと分かるが、返信する気にはなれなかった。

あたしは携帯電話を閉じて、カズヤに顔を向けた。

「良いの?
電話」

頷くのを見ると、彼はテーブルに頬杖をついて言った。

「俺が今から聞くことが無意味で、俺が今予想していることが外れるのを祈ってる。
それを前提にして、俺の質問に答えて」