「言っとくがな、俺はお前が物心つく前から店の手伝いをして、パン作りをして来たんだ。知ったふうな口利くんじゃねぇよ」
「………すみません」
俺は怒りをストレートに表した。
だって、これが俺の本心だから。
パン作りをなめられたくないし、俺の苦労が解って堪るかってのっ!
受験シーズンで忙しい時期だって、毎日欠かさず厨房に立った。
しかも、仕事だけでなく勉強だって手を抜いた覚えはない。
別にそれを自慢したいとも思えないし、誰かに褒められたいとも思えない。
ただ、馬鹿にされる筋合いはない。
「いい機会だから、お前に忠告しとく」
「…………」
「あの場所は、俺にとって『聖域』とも言える大事な場所だ。中途半端な気持ちで足を踏み入れられるのは黙ってらんねぇ」
「………はい」
「お前が何で『パン職人』になりたいかなんて、俺には関係ない。だけどな、遊び感覚で入っていい世界じゃねぇんだよ」
「…………」
「解ったか」
「………はい」
真っ直ぐ向けられた視線は、思いのほか真剣な眼差しだった。



