もしかしたら、彼が痴漢を撃退してくれたのかもしれない。
………ううん、多分そうだ。
何で、ここにいるのかは分からないけど。
でも、正直助かった。
私はほんの少し振り返って、
「ありがとう………ございます」
「…………」
彼は無言で流れる景色を眺めている。
別に親しい間柄じゃない。
会話したいとも思わないし、こんな混雑してる車内で朝の続きの質問に答えるのも嫌。
というより、質問に答えなきゃならない義務はないよね?
私は自問自答しながら脳内を整理していると、運よく降りる駅に到着した。
ドアが開いたと同時に振り返って。
「さっきは、ありがとうございましたっ!」
今一度、お礼を口にした。
やっぱり、礼儀は弁えないとね。
そんな私の態度に驚きつつも、ほんの少し口角を緩めた彼。
多分、私の意志は通じたようだ。
電車を降りた私は、人波に乗るようにして改札を出た。



