不本意にも動揺してしまった俺。
蘭の言葉で我に返った。
「1つ目は、何でうちでバイトする気になったんだよ」
「それは面接の時にお話しましたが、手に職をつけて自立したいので」
「手に職をって、パン職人にでもなりたいのか?」
「………出来れば」
「パティシエじゃなくて?」
「………はい」
謎は1つ解けたが、しっくり来ない。
自分と同じ夢を持つ人間が、こんなにも近くにいる事に不思議な気分になる。
「じゃあ、何で自立したいワケ?」
「うち、………母子家庭なので。出来るだけ早くに、母には楽させたいです」
「……へぇ~」
どこまでが本当かは分からない。
だが、家庭の事情に関して文句を言うつもりは無い。
「あのさ、これは不可抗力なんだけど……」
「……はい、何ですか?」
「………養護の倉田とはどんな関係?」
「…………」
俺の質問に言葉が返って来ない。
当然、俺が知ってる事に驚いているのだろうが。
「もしかして、………この間、廊下に居合わせたのは………お兄さんだったんですか?」
秘密がバレて不安なのか、声が震え気味に聞こえた。



