―――――お弁当。


ギンガムチェックのナフキンに包まれた弁当箱。

作りたてなのか、まだ温かい。

それに、美味しそうな匂いがする。


やっぱり、生徒と教諭の関係じゃない。

袋を受取った時の、養護教諭の嬉しそうなあの顏。

それに、楽しそうに会話するあの女の顔が全てを結論付けている。



噂なんて、大半がデマに過ぎない。

それは、真実が全く違った所にきちんとあるからで。


でも、こうして目の前で目撃してしまうと、少なからず動揺してしまう。


あの養護教諭がダメだとか、そういう問題じゃなくて。

何ていうか、………わざわざ危険な橋を渡らなくてもいいのにと思ってしまう。


まぁ、人を好きになるのに理由なんて無いか。

気付いたら、好きになってるってよく言うもんな。


……俺にはそれがどんなものなのか、分からないけど。

これ以上、噂にならない事を祈るばかり。


「あぁ、頭痛ぇ」


俺は雪崩れ込むようにベッドに潜り込んだ。