『黒い噂の女王』の存在を知ってから、10日が経過した。

あれから、あの女を目撃した事は1度も無い。


同じ学校とは言え、校舎も違うし学年も違う。

しかも、ケンから聞いた話によると、科も違うからまるっきり接点が無い事が分かった。

だから、俺はあの女の存在を知らなかったんだ。


そもそも噂自体好きじゃないし、自ら女を探し求めるような事もしない。

すれ違いに美人を発見しても、俺から声を掛けるような真似はしないし、誰かを通して紹介して貰うような事もしない。

俺は基本、受け身の人間。

お声が掛かればそれなりに応えるが、自ら獲物を狙うような真似は決してしない。


だって、人目を惹くような可愛い子や美人な子が、フリーでいる事の方が少ないからね?

わざわざ人のモノに手を出すほど、落ちぶれてないし、不自由してない。


だから、俺は………至って平和主義者。



『秋月 蘭』という女が気にはなったが、日を追うごとにそんな気も薄れて来て……。

記憶の片隅に放置されている……そんな状態になっていた。