噂って、本人の意思とは関係無しに瞬く間に広がってしまう。


俺が『製菓専門学校』に進学すると分かれば、何で?どうして?と、噂になるだろう。

そしたら、必ずと言っていいほどに『パティシエになるの?』と聞かれると思う。

それにどう考えても、俺が『パンの職人になる』とは思いもしないだろうな。


パンは嫌いじゃない。

むしろ、好きな方だ。

小さい頃から慣れ親しんだ環境は、最高のモノだと言っても過言じゃない。


親の背中を見て育ち、それなりに考えた結果だ。



だからこそ、完全なプライベートの部分を簡単に曝け出したくないんだ。

いづれは報告しなければならないけど、今はまだその時では無い。


俺は、願書提出締め切り直前に言うつもりでいる。


こう見えても、勉強は出来る方。

内申書に響くような事もしてないし、至って真面目に学校生活を送っている。



「相談ならいつでも乗るからな?」

「………はい。失礼します」


溜息を漏らす担任にお辞儀をして、職員室を後にした。