今のご時世、『**王子』なんて呼び名が流行してるせいで、俺は日々怯えて暮らしている。

だって、こんなイケてる俺が『パン王子』なんていう不名誉なあだ名でも付けられてみろ。

俺はお天道様に顔向けできない。

いや、そうじゃなくて、……女にモテなくなるじゃねぇか。


4つ下の弟・翔(かける)は『店の売り上げに貢献出来て、小遣いがアップすんじゃねぇの?』なんて他人事みたいに言う。

俺には劣るが、翔もかなりのイケメンだ。

あどけなさはあるものの、最近急に男らしくなって来た。

……好きなヤツでも出来たか?



冷蔵庫からペットボトルのお茶を取り出し、そのまま3階の自室へと向かう。

すると、


「おかえり」

「………ただいま」


翔が階段を下りて来た。


「あ、そうだ。兄貴、知ってる?明日から、新しいバイトの子が来るよ」

「へぇ」

「さっき、面接に来てた」

「顏は?」

「すっげぇ可愛い!清楚な感じで、ニコッと笑った顏がマジで可愛いのっ!」

「へぇ、お前の好きなタイプだな」