あの女、いつトイレを出たんだ?

俺がケンに視線を向けた時か?

でも、トイレから出て来たって俺らの前を通らなきゃ、改札は出れない。

あんな美人が目の前を通ったら、絶対分かるはずだ。


しかも、あの女子トイレから俺らと同じ高校の制服を着た女子高生なんて、1人も出て来なかった。

もしかして、トイレで着替えたのか?

でも、服装が違うくらいなら分るはず。

あんなにも目立つ女はいなかった。


――――どういうこと?


俺はモヤモヤしながら改札を出た。


「じゃあ、シュウ。……また明日な?」

「あっ、ん、また明日。今日は悪かったな」

「いいよ、別に」


ケンは再び携帯を耳に当て、手をヒラヒラとさせながら、俺とは反対の方へ歩いて行った。




仕方なく、自宅へと歩き出す。

スマホを手にして遊び相手を選び始めるが、どうも気分が向かない。

あの女のせいだ。


具合でも悪いのか。

まさか、自殺でも……なんて、性に合わない事をしたばっかりに、調子が狂う。

今日は大人しく、家に帰るとするか。