モテKingのターゲット



嫉妬されるような格好をしていなかった筈。

学校にいる時と違って、ノーメイクだし。


グラスに冷茶を淹れて、トレイに乗せると。

ひょいっと、私の手からそれを奪った。


別に手先は怪我をしてないのに……。

こういうさり気ない優しさはグッと来る。


リビングのソファに腰を下ろす。

見慣れた景色の中に彼がいる事が凄く不思議に思えて。

何度も瞬きをして確認してしまった。


「さっき」

「……………え?」

「お前の顔が暗かったから、もしかして落ち込んでんじゃねぇかなって思ったんだけど」

「………」


あんな少しの時間で分かるほど、私の顔は暗かったのだろうか?

だって、店以外の私はいつも無表情で変わり映え無い筈なのに。


「どうして………そんな風に思うんですか?」

「…………泣きそうな顏、してた」

「っ……」


彼には嘘が吐けそうに無い。

だって偽った私でなく、本当の『秋月 蘭』を見て欲しいから。


「そうだったかも、しれませんね」


ぼそりと呟いた声がどこかに吸い込まれてゆく。

そんな私の心境を悟ってか、