「なぁ」
「ッ?!」
突然、背後から彼の声がした。
近づいて来た気配がなくて、物凄く驚いたけど。
でも、手の届く距離に彼がいる事に嬉しさが込み上げてくる。
「………はい、何で、しょう?」
ぎこちない声が口から漏れる。
だって、背中越しに彼の気配を感じて、緊張の波が一気に押し寄せて来た。
すると、キッチン台に片手をついて、緊張で俯く私の顔を覗き込んで来た。
色気を纏った熱っぽい瞳で。
しかも、ゆっくりと顔を近づけ、私の長い髪に顔を埋めた。
「なぁ、それって、キスマーク?」
「……そうだと、言ったら?」
「フッ、っんなわけねぇだろ」
彼の言う『それ』とは、首すじの絆創膏。
だけど、私が噂にあるようなふしだらな女じゃないと解ってる筈。
「今日、カレーパン揚げただろ」
「へっ?」
「油の匂いがする」
そう口にした彼は、髪から顔を持ち上げた。
あぁ、なるほどね。
髪から油の匂いがして、首の絆創膏と照らし合わせて理解したんだ。
「見せてみろ」
「っ……」



