店の脇を奥へと進むと、2階へ上がる階段がある。
その階段を上ると自宅兼従業員寮になっている。
階段口には従業員の私物の自転車があったり、階段の踊り場には店に戴いた鉢植えが飾られている。
自宅がある4階への道のり。
毎日通っている階段なのに、別世界に見えた。
………彼がいるだけで。
玄関ドアの前に到着しても、尚も腕を掴んだままの彼。
仕方なく、空いてる方の手で鞄から鍵を取り出した。
だって、少しでも彼に触れて貰いたかったから。
“離して”とは言えなかった。
それに、いつもみたいに力一杯に掴まれてるのではなく。
今日は壊れ物を扱うみたいにそっと添えられている。
本当に勝手な解釈かもしれない。
自惚れもいい所なんだけど、彼に『女の子』扱いされてる気がして、凄く嬉しかった。
火傷を負ってない部分の筈なのに、火傷を負った患部よりもジンジンと熱く疼いて仕方ない。
………腕も悪い病気かもしれない、そんなおかしな思考が働いていた。



