「おいっ、待てって!」
「んッ!!?」
人波に乗って流されていた私の身体が急に制止させられ、行き場を無くした。
しかも、背後から聞こえて来た声は、煩いほどの雑踏の中でもちゃんと耳に届いた。
だって、聞き間違いも聞き漏れもする筈ない………彼の声だったから。
思わず身体がビクッと反応すると、彼は私の腕を掴んで人波を掻き分けるように流れから外れた場所へと歩き出す。
彼に掴まれてる腕には、テカテカと光る薬がたっぷりと塗られている。
その薬が彼の手に付いてしまうのではと、私は気が気でなかった。
駅を離れ、私の自宅へと歩き出す彼。
そんな彼の背中を眺め、ちょっぴり優越感に浸る。
だって、さっきの女の子を放置して来てくれたって事だよね?
これって、自惚れてもいいのかな?
無言のまま歩く彼の背中は、思っていた以上に大きくて。
やっぱり、男の人なんだと実感した。
あっという間にママの店の前に到着した。
けれど、掴んだ腕を離してくれそうに無くて……。
「あのっ、………周さん?」
「お前んち、どこから入んの?」
「え?」
「自宅。店じゃなくて、自宅の入口はどこなんだよ」
「…………こっちですけど」



