彼は私を『秋月 蘭』として見てくれる。
それは、とっても嬉しいことなんだけど……。
人間って1つを手にすると、『もっと』と欲が出て来る。
だから、今は『秋月 蘭』としてだけじゃなく『女の子』として見て欲しい。
……そう思ってしまったの。
そんな事、無理だって解ってるのに。
周さんが心配そうに声を掛けてくるけど、それ以上に女の視線が目障り。
それじゃなくても、今は落ち込んでる時だってのに。
これ以上、心を乱さないで欲しい。
だって、苛ついて余計なひと言を言ってしまいそうで。
そんな事を口にしたら、絶対周さんに嫌われちゃうもん。
それだけは絶対嫌。
だから私は、2人から離れようと隣りの車両に移動した。
吊革に掴まりさり気なく彼のいる車両を見ると、彼は窓の外を眺めていて、女はそんな彼に必死に話し掛けてる。
……羨ましい。
距離を置いた事でほんの少し落ち着いた。
彼と同じ景色を見ようと、窓の外へ視線を移す。
不規則な揺れに身を委ね、大きな溜息を吐いた。
電車を降りて、振り返る事無くホームを歩く。
だって、振り返ったらもっと惨めになりそうで………。
流れに乗って改札を出ると、



