「蘭?」
「ッ?!」
「シュウくんの知り合~い?」
足下に視線を落としていると、聞き慣れた声が耳に届いた。
その声に反応するように、身体がビクッと大きく震えた。
だって、メイクをしてなくて私を『蘭』と呼ぶ人物は限られている。
しかも、耳に届いた彼の声に上書きするみたいに、甘ったるい女の声が耳に届く。
ゆっくりと視線を上げると、
「おっ、やっぱり蘭だ。こんな時間にどうした?」
「やだ、シュウくんっ!今は私と一緒にいるんだから、他の女の子はどうでもいいでしょう?」
猫なで声の女の子は、周さんの身体に抱きついて鋭い視線を私に向けて来た。
彼がモテるのは知ってる。
だって、いつも連れ歩く女の子が違う子だもん。
たまあに仕事帰りに送って貰う時だって、彼から香って来る香水の匂いがいつも同じじゃない。
翔くんも『兄貴は女遊びが激しいから』と言ってたし。
本人も『俺はモテる』と豪語してたし。
だから、こういう状況だって全然普通なんだろうけど。
でも、私の心が苦しく締め付けられるの。
いつもみたいなチクッとした痛みじゃなくて、ぎゅーっと鷲掴みされたみたい重く苦しい鈍痛が。



