その後、マンションに戻ると
嵐はそのまま寝室に篭った


そっとしておくべきか悩んだけど
今は傍にいなきゃいけないと思って
寝室に入った


ベッドに座って俯いたままの嵐を抱きしめた


嵐は私の腰の辺りで腕を回してきつく抱きしめてきた


「嵐…我慢しなくて良いよ?」


「……兄貴が死んだ時…
俺と兄貴は並んで歩いてたんだ
弟は両親に挟まれて手を繋いで
俺達の少し後ろを歩いてた
親は俺の無能さに嘆き初めてた時だったと思う」


嵐は重い口調で少しずつ話をしてくれた


嵐が11歳、お兄さんは13歳で
お兄さんは優秀な事で有名な秀明学園に入ってたらしい
今は弟さんもその学園に入ってる

秀明学園は本当に優秀な人が多く
有名大学への進学率も100%

お兄さんは全国模試でも上位に入る
期待された自慢の息子

嵐は当時頭は良かったけど
秀明に入れるかは微妙だった

信号無視の車が突っ込んで来た時
お兄さんは咄嗟に嵐を庇った

そのせいで、両親に責められ続けた


「…嵐が悪い訳じゃないのに…辛かったね」


嵐を抱きしめて腕に力が入った


「…でも俺のせいで兄貴は死んだんだ」


「違うよ
お兄さんは嵐を守ってくれた
だから、嵐はお兄さんの分まで生きなきゃ
お兄さんは嵐が自分を責める事を望んでないと思う」


「俺は…親から兄貴を奪った」


「悪いのは車の方でしょ
嵐は悪くない」


「………」


「自分を責めないで
嵐が嵐らしく生きる事が大事なんだよ
お兄さんはきっとそれを望んでる」


「俺だけ幸せになっていいのかな…」


「幸せにならなきゃいけないんだよ」


切なくていつの間にか私は涙を流してた