顔を上げると、やっぱりそこにいたのは七瀬海翔だ。

「ありがとうございます。」

「別にお前のこと助けるためじゃねーし。てか、1人でこんな時間に帰るとか、どんだけ不用心なんだよ。」

「だって...」

だって、なっちゃん先に帰っちゃったんだもん。あたしだって1人で帰りたくなんかない。

「はぁー...」

沈黙が続いている。

先に口を開いたのは七瀬海翔の方だった。

「送る。」

へ?今なんて言いました?送るとか、言いませんでした?

ポカンと口を開けているあたしを促すように、七瀬海翔が腕を引っ張る。

「あの、大丈夫です。1人でも帰れるんで。ありがとうございました。」

そう言ってあたしは腕をはなそうとした。

だけど___

「送るってんだろ。行くぞ。」

「えっ、ちょっと!」

腕を握る力が強くて少し痛い。

逃げることができない。そう確信したあたしは、七瀬海翔に従うしかない。