トントン…トン…

キャベツを切る音が、キッチンに響く。
「柑菜ちゃん、上手やで。ほな、一人でやってみ」

「あ、がんばりますっ!」

よし、猫の手…力を抜いて。

トン…トントン…

「ええ調子や」

「えへへ〜」

褒められるとやっぱり嬉しいなぁ
よし!もっと頑張ろうっ!

トントン…トン…

「…ッ…」

やばい、指切っちゃった…。
す、少し調子に乗りすぎた…!!

「柑菜ちゃん?」

ま、真守さんが心配してる?!
これは、だめだ!
指切ったなんて言ったら…もっと心配かけちゃうよ…。

「な、なんでもないですよ!」

「なんでもなくないやろ?指見してみ?涙目なっとる。指切ってしもたか?」

泣くのを我慢してたもんだから…
涙目になってたのかぁ…それじゃあ、隠しきれないよね。

渋々、指を出した私。

「結構深いな。とりあえず、そこの椅子座って。救急箱とかあるか?」

「あ、上の棚に置いてあります」

ダイニングテーブルの椅子に黙って座る私…。ほんとに、なんもできない。
迷惑かけてばっかり…。

「ほら、指出して」

真守さんは、パパっと処置をする。

「あの、ありがとうございます」

「いえいえ、すぐ作るから…少しここで待っといてや?」

「ありがとうございます」

晩御飯まで全部作らせちゃうなんて、
ほんとに…女子力の欠片もない私。