急に男の声がしたので、私は口から出かかった心臓を慌てて飲み込んだ。






「琉生」



そこにいたのは中園琉生(なかぞのりゅうせい)。



私の幼なじみだ。




幼なじみと言ってもただの幼なじみではない。



家が隣と言うだけではなく誕生日も一日違いという筋金入りの幼なじみだ。






親同士が仲良しと言うこともあり、生まれたときから兄妹のようにして育てられてきた。



「何してんだ? こんなところで」


「何でもいいでしょ! 琉生には関係ないことだし」



琉生は私たちの方をじっと見ている。



「その下駄箱って、草壁裕哉のじゃないか?」




私は慌てて下駄箱から離れる。



「もしかして裕哉恒例のラブレターか?」


「ち、違うよ!」


私は顔を真っ赤にしながら言う。




「その慌て方だと図星だな」



付き合いが長いだけあって、琉生は私の顔色でその心境を読み取る術を心得ている。



「おまえ草壁裕哉が好きなのか?」


「違うって言ってるじゃん!!」


「やめとけ。あいつに振り向いてもらえる確率なんて、宝くじが当たるより悪いに決まってる」 



確かにそうかもしれないけど、たった一言で乙女の恋心をどん底に落とさなくてもいいじゃん。






「そうなんだよ〜。柚衣ちゃんは〜草壁裕哉君が好きなの〜」


突然、野乃葉ちゃんが言い出した。



積極的とは言えない性格の野乃葉ちゃんだけにみんなビックリして黙っている。



「だから〜、中園君も応援してあげてほしいの〜」


「悪いけどお断りだ。確率の悪い賭はしないことにしてるんだ」



そう言うと琉生は私たちの前から消えていった。






そして、数日間・・・

愛しの彼からの連絡は来ないのだった。