「別に誰に何話してもいいけど、草壁君には言わないで」


「どうして?」


「嫌われちゃうから」


「お前あいつのことそんなに好きなのか?」


「うん。好き・・・」




私は下を向きぼそっと答える。






「やめとけって、んなの素人がエベレストに登るようなもんだ」


「分かってるよ。でも、あの優しさが、あの心の広さがいいの」


「そうか・・・」


しばらくの空白の後、琉生は言った。




「草壁も心配してたから、怒鳴れるくらい元気だって伝えとく」


「ねえ、中園君て草壁君の友達なんでしょ」




突然、沙耶ちゃんが琉生に話しかける。






「ああ、もてる者同士仲良くなったっていうか」



「あんたはいつも一言多い」




私は琉生に突っ込みを入れた。








「だったら、草壁君と柚衣がデートできるようにし向けてよ」


「それは・・・」


「別に1対1とは言わないわ。遊びに誘ってくれたらいいだけ」


「それくらいならできるかもしんねぇけど・・・断わる」

「どうしてよ」

「前も言ったが、俺は勝てない賭けはしねえ」

「もしかして、中園君て本当に柚衣のことが好きなの?」


「そんなことねえ」




声は小さめだった。