すると、普段怒らない拓音が男子生徒の胸ぐらを掴む。



「やめて、拓音!やめてっっっ!!」



シーンとした教室に私の声はこだました。


「クソっ…鈴音帰るぞ」


「はいっ…」


私は、学校を後にした。


いつも短く感じる帰り道。

今日はとても長く感じた。



 
「鈴音ん家行ってもいいか?」


「いいよ」

親は共働きでいない。
シーンと静まった家に拓音を入れ、部屋に案内した。



バタンとドアを閉めると、止めどなくあふれてくる涙。



「鈴音…」


拓音が優しく後ろから抱き締めてくれた。