『結里、このチュニックとロングスカート、どっちが似合うと思う?』

「う~ん…那葵、スタイルいいからどっちも似合うんだけど…。那葵ならチュニックの方が似合うかも」

『ほんと?じゃあ、こっちのチュニック買う』

るんるん。
結里とのショッピング、楽しい。
…ん?
あ、結里に似合いそうなスカート発見。
結里に頼んで試着してもらおっ。

『結里、ちょっと待ってて』

「え、うん。わかった」

結里に一言言ってスカートを取りに行く。

…よし、取れた。
結里のところに帰ろ。
そう思ってくるりと後ろを向いた瞬間。

ドンって、誰かにぶつかってしまった。
痛くはなかったけど、びっくりした。

「あら、ごめんなさい。大丈夫ですか…?」

相手の人に謝られる。
高い声と口調で女の人だと思う。

『こちらこそ、すみません』

そう言って、漸く顔をぶつかった人に向けた。

『…っ』

思わず、息を呑んだ。
だって、その人があまりにも綺麗だったから。
真っ白な肌に長い睫毛。
ふんわりとウェーブのかかった蜂蜜色の髪。
すらりと伸びた手足。
極めつけは、お人形さんみたいな顔立ちにアイスブルーの瞳。
凄い。おとぎ話のお姫様みたい。
こんな人、実際にいるんだ…。

「…あの、なにか?」

っは。
しまった。ガン見してしまった。

『あ、いえ。失礼しました…』

そそくさとその場を離れる。
すごい人だった。
モデルっていうより、お姫様だ、やっぱり。
だけどあの人、学生だ。
制服着てた。
休日なのに。



…そういえば、胸ポケットの紋章、どっかで見たことある気がする。


「あ、那葵。どこ行ってたの?」

気づいたら、結里が目の前にいた。
あ…。戻って来てたんだ。

『えっと、これ…結里に似合うと思って』

「わっ、か、かわいい…っ!」

はい吹っ飛んだー。
さっきのことなんて吹っ飛んだー。
結里のキラキラした目、かわいい。
スカートなんて比じゃないよ。
結里が一番かわいい。

ああ、今日は最高の1日だった。
…けど、やっぱりあの美人なお姫様のことが、頭の中に引っかかった。