「那葵ちゃんの誕生日って7月7日なの?」

図書室で開口一番そう言われた。
彼方に。

〈うん。そうだけど…〉

なんで彼方が知ってるの。
教えたことないのに。
じと目で彼方を見やる。

「え、あの…図書室で女子が那葵ちゃんの誕生日のこと話してて、それがおれの耳にも入ったっていうか…えっと、その…」

彼方、動揺中。
ふふ、やっぱり面白い。

〈彼方、もうわかったから〉

ずっとえ、とかあ、とかしどろもどろ。
だけど。
彼方、ちょっとしょんぼりしてる。
彼方のしょんぼり率多いな…。

〈なんでそんな悲しそうなの?〉

ストレートに聞いてみる。
そしたら彼方、もっと悲しそうな顔した。
え、なんで?

『おれ…ここから出れないし、なんにもないからさ。プレゼントとかあげられないし、お祝いもできないなって思って」

彼方が俯き気味で言った。
…なーんだ。そんなことか。

〈そんなのいいよ〉

「でもっ…」

〈彼方が私とここで一緒にいてくれて、「おめでとう」って言ってくれるだけでいいの〉

それで、私の幸せは3割増し。
どんなに高いプレゼントより、そばにいてくれることが。
どんなにおいしいケーキより、心のこもったおめでとうが。
私は、一番嬉しくて幸せなの。