あのね。
彼方寝ないって言ったじゃん、私。
だけど。
彼方、寝てる。
机に顔を突っ伏してる。
え、寝るの、え?
…どうしよ。
起こすの、忍びないな。
だけど、あと10分ちょいで舞衣ちゃん図書室に来ちゃうよ。
しょうがない。起こそう。

『彼方』

「!?な、那葵ちゃんっ!?え、何で?」

『こっちがなんでだよ』

彼方、ばっちり起きてた。
机に突っ伏してるだけだった。
食い気味に返事返された。
紛らわしい。もう。
…っは、いかんいかん。


『えっと、彼方。ごめん。また、彼方に怒っちゃって』

まず、きちんと謝る。

「え、那葵ちゃん?」

『あのね、彼方。私、あの日彼方が自分のこと知って未練全部なくなったら、彼方が成仏してもう二度と彼方に会えないかもって思って、悲しくなって、辛いと思ったの』

「…」

『だけど辛いのを、イライラしたと勘違いしたの。本当に、ごめんね彼方』

彼方、黙ってる。
え…怒ってる…?